税制「改正」、大企業に新たな減税

新型コロナウイルスの感染拡大で消費が低迷し、中小企業の経営は危機的な状況だ。それにもかかわらず、自民・公明両党が合意(2020年12月10日)した来年度の税制改正大網には、国民生活や経営を直接支える消費税減税は盛り込まれなかった。コロナ禍で増幅する格差拡大の是正策もない。

目立つのは大企業のさらなる減税である。

大網にはコロナ後の「経済再生」策として、研究開発減税の拡充が盛り込まれた。

研究開発減税には研究開発を行っている企業の試験研究費のうち一定の割合を法人税から減らす制度だ。90%は大企業が使っている。デジタル化の促進を口実に、これまで対象にならなかったソフトウェアも減税の対象とする。売上高が減少した企業は、法人税から控除できる上限を、現行25%から30%に引き上げる。

「クラウド」(インターネット経由でさまざまな情報通信技術を利用できるサービス)を導入した場合、投資額の最大5%を納税額から差し引くなどの「デジタルトランスフォーメーション投資促進税制」を創設する。

さらに大企業には、赤字を翌年以降の黒字と相殺できる繰越欠損金制度を拡充。所得から控除できる上限を、現行の50%から100%に引き上げる。

 

 中小企業との格差いっそう拡大

一方、「中小企業の経営資源の集約化に資する税制」として、中小企業の買収に関わる法人税の軽減措置を導入する。財務省の財政制度等審議会の建議(20年11月25日)は中小企業の「新陳代謝の促進」を強調した。中小企業の淘汰を促すものにならないか危惧される。

消費税導入から32年、法人税率と所得税の最高税率は

大幅に引き下げられ、消費税率は引上げが続いた。

大企業と富裕層は減税の恩恵を受け、

庶民と中小企業は増税に苦しんだ。

大企業と中堅・中小企業の所得格差は飛躍的に

拡大している(グラフ)。

この税制のゆがみを正して、公平な税制を実現し、

格差を是正していくことが求められる。

大企業や富裕層に応分の負担を求めることで、

年間42兆円の財源が生まれる(不公平な税制をただす会

2020年6月18日発表)。そうすれば、消費税に

頼らなくても社会保障の財源を生みだせる。

 

税制の歪みと菅政権

菅政権の税制「改正」は安倍政権のアベノミクス成長戦略を引き継ぎ、大企業、富裕層優遇が経済成長をもたらすという政策のようだ。しかし、大企業の収益は毎年のように増大し、内部留保も膨れ上がっていったにもかかわらず、経済は停滞し続けた。所得格差は拡がった。

大企業は所得を大幅に増やしているにもかかわらず、税負担は様々な優遇措置により中小企業の半分だ。富裕層は大幅に所得を増やしているにもかかわらず、所得税の最高税率の引下げや証券優遇税制などにより、税負担は極端に低い。菅政権はこうした税制のゆがみ、不公平を是正しようとする考えがない。

コロナ禍が所得格差を増幅している今こそ、税制度は「応能負担原則」で累進性を強化して、大企業や富裕層には能力に応じた負担を求め、所得再配分を進めていくことが重要だ。

(公平税制 2021年2月15日発行 第426号)

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