岸田さん 法人税1億円の壁はどうしますか

岸田首相が金融所得の1億円の壁について見直しを言明した。

所得1億円までは、所得が大きく成ればなるほど上がっていった所得税の負担率が、

1億円の28.5%をピークに、それを超えると一転、下がり始める。

所得税100億円超の超富裕層では11.1%(平成25年)まで下がってしまう問題。

いいとろに目を付けたと思っていたら、

この発言で株価が下がったり、財界から批判が上がると、「もう触れない」と腰砕けになった。

これが法人税1億円の壁

岸田首相、法人税にも1億円の壁があるのはご存知か。

法人税の場合、資本金規模別に法人税実質負担率を計算してみると、

資本金が増えるにしたがって上昇してゆく法人税の実質負担率は、

資本金1億円超5億円まででピークの20.7%になる。

ところがそれを超えると資本金が大きくなるにつれて負担率は下がる。

資本金100億円超では13.3%まで下がる。

大企業が大部分の連結法人では4.2%まで下がってしまう(2019年度)。

これは中小企業よりもずっと低い水準だ。

このため法人税の実質負担率は、中小企業が18.2%なのに、大企業は9.6%になっている。

大企業は中小企業の半分しか納税していないのか?大きな不公平が存在する。

莫大な大企業減税

莫大な利益を上げている日本の上場企業、利益上位20社の法人3税(法人税、法人住民税、法人事業税)の負担率を調べた(2021年3月期)。

法人3税の税負担率は法人実効税率という。日本の場合約30%だ。

調べてびっくりした(表参照)。

法人3税 実際の負担率(%)
利益上位大企業法人 トヨタ自動車 15.3
ソフトバンクG 0.0
ソニーG(連) 13.0
三菱商事 1.2
本田技研工業 12.7
武田薬品工業(連) 2.7
三菱電機 7.9

有価証券報告書から筆者が作成。(連)は連結損益計算書から作成

 

トヨタ自動車15.3%、ソフトバンクG0.0%(法人税を払っていない)。三菱商事1.2%などである。

大企業の実際の納税額が法定実効税率を大きく下回るのは、大企業優遇税制による大きな減税があるためだ。

トヨタ自動車は受取配当金益金不算入制度で2,792億円、試験研究費の税額控除制度(研究開発減税)で528億円の減税を受けたと推定される。

ソフトバンクGは受取配当金益金不算入制度で4,863億円、三菱商事は受取配当金益金不算入制度で1,295億円の減税を受けたと推定される。

中小企業が赤字でも払わなければならない消費税に苦しんでいる一方で、

大儲けの大企業が莫大な減税を享受して、軽すぎる税負担。

岸田首相、この現実をしっかり見るべきです。

国民が求めているのは、大企業や富裕層を優遇する歪んだ税制ではなく、

大企業や富裕層にも能力に応じた負担をしてもらう、公平な税制だ。

2022年度税制改正が間もなく発表される。格差是正がきちんと盛り込まれているか、「税制改正」を見る、重要なポイントがここにある。

 

月刊公平税制 2021年12月15日発行 第436号