コロナ禍の財源、大企業・富裕層の課税強化へ

世界の新たな動き

新型コロナ対策の財源をめぐり、大企業や富裕層に負担を求める新たな動きが拡がっている。

イギリスは半世紀ぶりに法人税を増税する。

英政府は「経済回復後に借金をコントロールしなければ、次の危機で大胆な行動ができなくなる」(スナク財務相、3月3日の英下院演説)として、23年4月からの法人税増税を決断した。

増税の主な対象は大企業だ。

利益が3700万円以上の企業は税率19%から25%へ増税、

利益が750万円未満の企業は19%の現行税率を適用。

利益が750~3700万円未満の企業には19%超~25%未満の税率とする累進税率の導入だ。

スナク財務相は、財源調達に法人税を選んだのは「利益を上げた大企業に貢献してもらう」ためだと述べた。

 

アメリカではバイデン政権のもとで財務政策が大きく変わろうとしている。大きく二つの計画を打ち出している。

一つは「米国雇用計画」。コロナ禍からの復興を目指すインフラ(基盤)投資計画だ。

その中で連邦法人税率を21%から28%に引き上げる企業増税を提案した。

15年で2.5兆ドル(約275兆円)の財源を生み出すとしている。(この提案は6月24日の超党派の合意案で、ひとまず先送りになった)

もう一つは「米国家族計画」。子育て・教育支援策だ。

財源は富裕層増税で、10年間で160兆円を調達。

①連邦個人所得の最高税率を37%から39.6%に引き上げる

②年収100万ドル(約1.1億円)超の富裕層の株式譲渡益の税率を20%から39.6%に引き上げる、としている。

バイデン大統領は4月の施政方針演説で、

「企業と1%の最富裕層に公平な負担をしてもらう時が来た。(中略)富がこぼれ落ちるトリクルダウン理論はこれまで一度も機能しなかった。底辺を引上げ、中間層を起点に経済を成長させる時だ」と訴えた。

 

タックスヘイブン(租税回避地)に拠点を置く多国籍企業が増えている。そうした企業を呼び込むため、「底辺への競争」と呼ばれる各国・地域の税率引き下げ競争が、財政悪化の一因になってきた。

そこでG20(20か国・地域などが主導し、約140か国が参加する「包括的枠組み」が国際的最低税率の具体案を示してきた。

最低税率の導入は「底辺への競争」に一定の歯止めをかけ、企業の「課税逃れ」を防ぐ狙いがある。

主要7か国(G7)財務相会議は6月6日の共同声明で、法人税の最低税率を「15%以上」とすることを明記。

デジタル課税についても、多国籍企業の利益の一部に対する課税権を消費地である市場国に与えることで合意した。

コロナ対策、社会保障の財源は、利益を上げている大企業、富裕層からの税金で賄い、多国籍企業の税逃れは許さないという流れが世界的潮流になってきている。

 

トヨタは半分、ソフトバンクはゼロ

大企業の3月期決算が判明した。

トヨタ自動車、税引前利益1兆9千億円、税金は2893億円(15.3%)。

ソフトバンクG、税引前利益1兆5千億円、税金は5百万円(0.00%)。

あまりに優遇。能力に応じた公平な負担を求める。

(月刊公平税制 2021年7月15日発行 第431号)

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