コロナ禍で問われる格差拡大と高額所得者の税負担

(1)消費税導入30年 所得格差が広がっている

小泉構造改革やアベノミクスなどの新自由主義政策が行われてきた結果、国民の間の所得格差が拡がっている。

国税庁の「申告所得税標本調査」から、30年間の実態を追ってみた。

グラフを参照していただきたい。所得上位1%の人の平均所得金額の推移を示している。

平成元年から3年はバブルの時期であったが、それが落ち着いた平成4年の67百万円/年間が、その後激増し平成30年には1億40百万円になっている。

一方で、このグラフには記載していないが、

所得下位90%の人(中流以下のほとんどの人である)の平均所得金額は、平成元年から30年まで、3百万円から4百万円で全く変わらない。

30年間、庶民の所得は増えず、一握りの富裕層のみ所得が激増して、日本社会の所得格差が拡がっていることが分かった。

(2)高額所得者の税負担の実態

グラフは所得上位1%の人の平均所得金額、平均納税額、平均税負担率の推移を明らかにしている。

これを見ると、所得上位1%の高額所得者は、上で述べた所得金額の伸び具合と比べると、納税額はそれほど増加していない。

平均税負担率(納税額÷所得金額)は所得の激増にもかかわらず、まったく増加していない。25%と低率である。

税負担率は最高税率45%を考えると著しく低い。高額所得者の所得税収の空洞化が発生している。

(3)高額所得者の低い税負担率の要因

高額所得者は合計所得金額に占める金融所得の割合が高い。金融所得への課税は他の所得と分離して低率の比例税率で課税されている。

具体的には株式等の譲渡益は15%の定率課税になっている。このため実態として、所得1億円を超えると高額所得者の税負担率は低下し、所得100億円超の高額所得者の税負担率は17.1%(平成29年度)となっている。

従って分離課税対象所得を有する超高額所得者の低い税負担率が、平均税負担率を押し下げていると考えられる。

併せて、この30年間の最高税率の引下げは、それ以下の税率の引下げを伴って、全体として高額所得者の税負担率の押し下げになっていると言えよう。

高額所得者の税収の空洞化をなくし、課税の公平を取り戻すには、

①金融所得課税の増税  ②最高税率の引下げを含む累進課税の強化  が必要となる。

(4)ただす会の財源試算が示す方向

コロナ禍はより弱い立場の人々ほど打撃を受け、困窮に突き落とされている。

他方富裕層は、コロナ危機当初、株価の急落で一時的に打撃を受けたが、各国政府・中央銀行が強力な資金供給を行ったことにより、株価は急速に回復し、富裕層の資産は増加した。

コロナ対策には50兆円をこえる財源が必要と言われる。ただす会は、所得税の累進課税の強化などで合計41兆5,075億円の財源提案を行っている。税の不公平をただす中に財源あり。これが国民が望む大義ある税制改革である。

「公平税制」2020年9月15日発行 第421号