大企業の3期連続最高益と国民のための経済

上場企業は3年連続最高益と報道されている(「日経」5月24日付)。

2023年度(24年3月期)の純利益は前期比20%増の4兆8285億円。

値上げ、販売増、円安が貢献しているという。

大企業は21年度から23年度まで史上最高益を続けている。

一方中小企業は、原材料高、賃上げ、インボイスに苦しんでいる。

値上げも容易ではない。賃上げも物価高に追いつかない。

法人税の税収力が低下?

大企業は史上最高益なのに、政府は「法人税の税収力が低下している」という。

法人所得は1989年46兆円だったものが、2022年には112兆円に2.4倍になっている。

所得が増えれば法人税収も増えるはずだが、法人税収は19兆円から15兆円に減った。

なぜなのか。

1989年に消費税が導入されてから35年、消費税は3%から10%に増税の一方で、

法人税率は大幅に引き下げ、大企業優遇税制を続け、拡大してきたからである。

上位20社の税負担は平均で19.6%と10%台

そこで24年3月期の利益上位20社の税負担の状況を分析した(表)。

法人3税の法定実効税率は平均で30.5%であるが、各社が実際に支払った税金は大幅に少ない会社が多い。

平均の実質負担率は平均で19.6%と10%台である。

多額の大企業減税があるためだ。

トヨタ自動車は受取配当益金不算入で3737億円、試験研究費税額控除で1004億円、合計4741億円の減税。

三菱商事は受取配当益金不算入で2569億円の減税。

本田技研工業は受取配当益金不算入で1837億円、試験研究費税額控除で174億円、合計2012億円の減税という具合だ。

応分の負担、所得再配分が必要

以前は一国の企業活動の活発化はその国の雇用を増大させ、国民の所得と消費を拡大して国民生活に貢献するものだった。

しかし、企業の多国籍化が進むと、国内の製造業が空洞化し、生産の拡大が国内の雇用や所得の増大に結びつかなくなるのだ。

グローバル企業の利益と国民の利益が一致しなくなっている。

消費税減税、大企業・富裕層の税の応分の負担による所得再配分がどうしても必要なのだ。

それが国民のための経済と言えるのではないか。

 

主な大企業の法人3税負担率
企業名 2023年度
①税引前純利益(億円) ②法人3税(億円) ③法定実効税率(%) ④負担率  ②÷①(%)
トヨタ自動車 55,786 12,537 30.1 22.4
日本電信電話 19,804 5,917 31.46 29.8
ソニーグループ 12,686 2,710 31.5 21.3
三菱商事 9,242 392 30.6 4.2
KDDI 7,644 1,933 30.6 25.2
本田技研工業 7,592 823 30.2 10.8
ソフトバンク 6,536 1,255 30.6 19.2
日立製作所 6,320 815 30.5 12.9
日本郵政 6,290 1,670 30.6 26.5
三井物産 5,539 19 31.0 0.3
住友商事連 5,276 953 31.0 18.1
伊藤忠商事 5,234 332 31.0 6.3
東海旅客鉄道 5,085 1,114 非開示 21.9
任天堂 4,975 1,595 非開示 32.0
関西電力 4,460 906 28.0 20.3
日本製鉄 4,056 467 30.6 11.5
丸紅 3,593 △84 31.0 △2.3
信越化学 3,590 580 30.5 16.1
SUBARU 3,444 954 30.5 27.7
日産自動車 3,026 340 30.6 11.2
合計・平均 180,178 35,228 30.5 19.6

(注)持株会社、金融業は除く。法人税(法人税、法人住民税、法人事業税)の負担金額を税引前純利益の金額で除して実際の負担率を計算。法定実効税率は各社の有価証券報告書に記載されている税率。

(出所)各社の有価証券報告書に記載された個別損益計算書よリ税理士菅隆徳が作成。「連」とある会社は連結損益計算書より作成。個別損益計算書が実質持株会社化している場合などに、連結損益計算書を採用している。

月刊公平税制 2024年9月15日発行 第469号

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です